最近のテレビや新聞、インターネットの報道を見るとプラスチックは悪いもの、という印象が定着しつつあるのかもしれません。加えて、日々の生活におけるごみの分別や最近ではレジ袋の有料化を通じて、無意識にプラスチックへの接し方が変わってきたかもしれません。
若者はもちろん、50歳以下の人は物心がつく頃から、身の回りはプラスチックで満たされていたと思います。私ですら、プラスチックの少ない生活は記憶が定かでありません。 フェノール樹脂は低分子から作られた最古のプラスチックで、発明されてから百年余りです。
ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)といった汎用プラスチックも発明されて100年経っていません。20世紀の化学工業の発展の中で最も重要な発明の一つであり、ノーベル化学賞の受賞対象となった「チーグラー・ナッタ触媒」は、1950年代に高密度ポリエチレン(HDPE)やアイソタクチックポリプロピレン(iPP)の生産技術として発明されています。 iPPは立体規則的に合成されており、工業的にわずかに製造されているアタクチックポリプロピレン(aPP) とは全く異なる性質を示します。iPPの立体規則性は物性に大きな影響を与え、発明当時に比べPPの物性は飛躍的に高まりました。 PPとPE、この二つのプラスチックで、全てのプラスチック生産量の40%以上を占めます。この発明無しに、現在のプラスチック産業の繁栄は無かったのかもしれません。